凄い話だと聞き、読まなくてはと思い続け、この本が私の手元に来てから読み出すまでに随分と時間がかかりました。
表紙の絵はかなり衝撃的で、見るからにこの本の気迫が伝わってくる。
読んでみると、想像以上に凄まじい話です。
落ち込みたい時に読む、というよりも、心身ともに元気があって体力があるときでないと、厳しいかもしれません。
そのくらい、読み終わった時のダメージは大きなものでした。
14歳のシュウジは広大な干拓地に住む。
そこは昔からの「浜」と新しく作った土地「沖」とに大きく分けられてしまっている。
町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、「沖」の人々は追い出される。
優秀だった兄が犯罪を起こし、父は逃げ出し、母はギャンブルで借金にまみれる。
いじめ、引きこもり、家庭内暴力、放火、借金、一家離散と散々な事柄に巻き込まれるシュウジ。
同級生で走るのが速いエリ、お調子者の徹夫、鬼ケンとアカネ、神父さま。
それぞれがそれぞれの痛みを持つ。
読了後、なんとも言えない気持ちで苦しくなりました。
感動ではない衝撃で涙が止まりません。
自分はなんて生ぬるいのかと思ってしまうくらい。
「孤独」「孤立」「孤高」。
どれもが共存しているかと思えば、一瞬で消えてしまうこともある。
けれども、一瞬で復活するものも。
こんなに踏みつけられ、堕ちていくシュウジは、最後は「孤高」になれたのではないかと思う。
中学生が背負い込むには余りに重い人生で、それでも「人間はみな公平だ」と言われる。
絶望だけはしないで欲しいという神父の言葉は、シュウジ、エリ、アカネに伝わったと信じたい。
だって、ひとりとひとりでふたりになり、ほんの少しだけ暖かくなれるのだから。
自分自身を人質にして生きていけば、怖いものなんてなにもないじゃないか。
映画化もされています。
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★9/10
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posted by このみ。 at 22:59
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