2008年11月19日

「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美

なぜ僕はきちんと人を愛せないんだろう――とめどないこの世に、真実の愛を求めてさまよった男一匹の恋とかなしみの道行き。切なさあふれる傑作連作集

1人の男性「ニシノクニヒコ」を10人の女性から見た10編の連作短編。
ニシノくんは、とにかくモテる。
女性の扱い方は天性のもので、甘え上手、顔とスタイルも良い、要領も良い、頭も悪くない。ワォ。
それでも女性を心から愛せない。
そして、必ず最後は女性の方から別れを告げられる。

こんな男性、ここまで行かなくてもこれに近い人って居ると思う。
これだけモテるなら良いかなとも思うけれど、やっぱり寂しいよな。
女性の視点から書かれているので、とても共感できる。
私の友達(男性)がこの本を読んだけれど、いまいちダメだったらしい。
やっぱり男性と女性で、考え方や感じ方が違うのね。

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)
ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 460
  • 発売日: 2006/07
  • 売上ランキング: 36609
  • おすすめ度 4.0

★8/10


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2008年11月13日

「生まれる森」島本理生

恋人に別れを告げられた痛手から、自棄になっていた主人公の「わたし」。友だちの部屋を借り、期間限定の独り暮らしを始めたが、いつまでも失恋の記憶は拭えないままだった。そんな主人公に新たな風を送ってくれたのは、高校時代の同級生キクちゃんと、キクちゃんの家族だった。ガテン系の父、中学生の弟、そして主人公の悲しみを知ったうえでそれを受け止めてくれる兄の雪生。本当の家族のように親しくしてくれる一家に見守られ、終わった恋を整理しながら、次第に主人公は癒されていく。

予備校の先生のサイトウさんに恋をした主人公が、別れた後も抜け出せない世界がとても分かりやすい。
辛くて苦しいけれど、あきらめなければならない、というのは簡単な事じゃない。
キクちゃんとキクちゃんの家族がとても感じが良くて好感が持てます。
キクちゃんみたいな子は、私も大の親友になれそう。
主人公の独特の性格や感性も好きです。

今度あの人に触れたら、きっとわたしは死んでしまう。 (本文より)

生まれる森
生まれる森
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2004/01/29
  • 売上ランキング: 297063
  • おすすめ度 3.5


★7/10
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2008年11月07日

堂々巡り。

先日、音楽事務所の方とお話をする機会がありました。
そこで私たち「演奏する側」と「運営する側」の意見の食い違いがあり、思うことが沢山あってここに書いてみようかなと思ったわけですが、ここに書いたからどうなるわけでもないというのは充分分かっているつもりですので、読んだ方、どうか読み流してください(笑)

私たち「演奏する側」は、ぶっちゃけ「良い演奏をする」くらいしか出来ることがありません。チケットを売ったり、宣伝したり、それは「運営する側」の人がすることだし、(もちろんチケットノルマがある時などを含めて売ったり宣伝もしますが、それは個人規模のものですので。)どのホールで演奏するとか、どのスポンサーを付けるとか、この演奏会でどれくらいのお金が動くとか、そういうのも「運営する側」に任すしかありません。「運営する側」はもちろん仕事なので、お金が儲かるコンサートを第一に考えて、儲からないのはやりたくない。納得しますし、当然だと思います。

でも、「この楽器は儲からないから手を付けない」と、何もしないで決め付けていることに「演奏する側」としては黙っているわけにはいきません。どの楽器だってスターがいるし、ホールを満席にする演奏家がいます。大きなホールじゃなければ地元で活躍している人などだったら満席にだって出来ます。それこそ、莫大な宣伝費なんて要らないで。

根本にあるのは、「日本のチケット代が高い」ということ。
外国では映画を観るようにコンサートを聴きにいけます。高いチケットもあるけれど日本ほどではないし、敷居も高くないから、日本のように特別なもののようなとらえ方をされていない。オシャレしなくてもジーンズで聴きに行けます。これは日本はホール代も高いし、国からの助成もほとんど無いし、スポンサーも付きにくいことからきているので、ここから変えていかないと実現しないのですが。

日本で今よりも少しでもクラシックコンサートが身近な存在になるように、タレントのように露出している人を悪く言う人もいます。「あんまり上手くないのに外見で売っている」という意見も全否定はしませんが、その人たちのおかげでクラシックを聴くようになった人もいるのは無視できません。

プロのオーケストラに入ったって、ソロで活躍していたってほんの一部の人以外は厳しい日本。「日本では厳しい世界なんだから、真面目に音楽をやりたいなら海外に行くべきだ」というのも良く聞きますが、それが一番正しい道なのかは分かりません。海外で大活躍している人も沢山居るけれど、帰ってきてから日本のツテが無くて困っている人も多いです。

「演奏する側」も「運営する側」も、日本でクラシックを少しでも広げる、というのを目指しているのは同じ。状況を良くする事が出来るのは、どちらかと言ったら「運営する側」の方が近いところに居ると思います。それを「日本では売れる楽器しか売らない。やりたいなら海外へ」なんて言われると、「売らないから売れないのであって、海外に行って解決するものではない」と私たちは言い返すしかないのです。

あぁ、結局書いてしまった。そして暮らしにくい日本にも被ってしまったわ。
堂々巡り。
そして今日も秋の夜の風が身に凍みます・・・。
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2008年11月06日

「沙羅は和子の名を呼ぶ」加納朋子

もしもあの時、別の選択をしていれば、全く違う人生を歩んでいたのだろうか…。平凡な会社員・元城一樹のふとした夢想が、すべての始まりだった。一人娘の和子の前に姿をあらわした不思議な少女沙羅。その名前が甦らせる、消し去ったはずの過去。やがて、今ある世界と、あり得たはずの世界とが交錯しはじめて ―。表題作を含む、全10編を収録。珠玉のミステリ短編集。

加納朋子さんの文章は、ミステリーなのにとても優しい雰囲気。
ファンタジーな要素も沢山あって、ミステリーが余り得意でない私も充分に楽しめます。
どの話も良かったけれど、「黒いベールの貴婦人」「オレンジの半分」「沙羅は和子の名を呼ぶ」が面白かったです。

目次
黒いベールの貴婦人 / エンジェル・ムーン / フリージング・サマー
天使の都 / 海を見に行く日 / 橘の宿 / 花盗人 / 商店街の夜
オレンジの半分 / 沙羅は和子の名を呼ぶ

沙羅は和子の名を呼ぶ (集英社文庫)
沙羅は和子の名を呼ぶ (集英社文庫)
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 580
  • 発売日: 2002/09
  • 売上ランキング: 48089
  • おすすめ度 4.0

★7/10
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posted by このみ。 at 23:11 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

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