小川洋子の文章を満喫した気分です。
耳を病んだ主人公わたしは、速記者Yと出会う。
突発性難聴で耳鳴りがして病院に通い続け、やたらに苦い水薬を飲み続けるが、なかなか治らない。
Yの速記をしている指が、なんともわたしにとって必要な存在になっていく。
そんな中、昔の思い出のヴァイオリンを弾く13歳の少年を思い出す。
改めて、耳と心は深く結びついているのだなと思いました。
主人公のわたしがひどく傷つく出来事があり、知らないうちに記憶に迷い込んでしまう不安定な状態を、速記者Yと甥のヒロが助けています。
小川洋子の丁寧な文章が非常に心地良いです。
速記したメモの保管場所のくだりは「薬指の標本」に似ていて、なんだかひどく重要な何かを伝えようとしている気がします。
現実と幻想が入り混じってしまわないように、大事に大事に保管する、大切な場所。
とてもきれいな世界ですが、とても静かで、切ないです。
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★10/10