2008年05月28日

「月魚」三浦しをん

『無窮堂』は古書業界では名の知れた老舗。その三代目に当たる真志喜と「せどり屋」と呼ばれるやくざ者の父を持つ太一は幼い頃から兄弟のように育つ。ある夏の午後に起きた事件が二人の関係を変えてしまう…。

古本屋をしている設定や登場人物の個性は、とても好きな感じ。
ただ、若い男性二人が主人公で、ボーイズラヴ的な匂いがプンプンしています。
そんなシーンがあるわけではないけれど、お互い惹かれあい、お互いがお互いを必要とし、ただの友達、親友ではない、という事を筆者も言いたい感じ。
「そうなんだろうか、いや絶対そういうことなんだろう」なんて思いながら読んでいると、どこか集中できずに最後まで読んでしまいました。
それでもやっぱり三浦しをんなので、面白いのですけど。
題名の「月魚」は「げつぎょ」と読むそうです。

月魚 (角川文庫)
月魚 (角川文庫)
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 540
  • 発売日: 2004/05
  • 売上ランキング: 57508
  • おすすめ度 4.0

★8/10
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2008年05月07日

「医学のたまご」海堂尊

この本は、めずらしく横書き。
ページも左からスタートして右へ読み進めます。
初め少し読みにくかったのですが、すぐに気にならなくなりました。
僕は曽根崎薫、14歳。歴史はオタクの域に達しているけど、英語は苦手。愛読書はコミック『ドンドコ』。ちょっと要領のいい、ごくフツーの中学生だ。そんな僕が、ひょんなことから「日本一の天才少年」となり、東城大学の医学部で研究をすることに。でも、中学にも通わなくちゃいけないなんて、そりゃないよ……。医学生としての生活は、冷や汗と緊張の連続だ。なのに、しょっぱなからなにやらすごい発見をしてしまった(らしい)。教授は大興奮。研究室は大騒ぎ。しかし、それがすべての始まりだった……。ひょうひょうとした中学生医学生の奮闘ぶりを描く、コミカルで爽やかな医学ミステリー。

面白い!楽しく読めました!
海堂尊の代表作チーム・バチスタの栄光と同じ桜宮市の東城大学が舞台で、なんと田口講師も少しだけ出てきたりします。
世界的ゲーム理論学者の息子、曽根崎薫は、たまたま自分の親が作った「潜在能力試験」で全国1位の点数を取ってしまいます。歴史以外は成績悪いのに(笑)
14歳の普通の子供が医学生として研究することになるという設定だから、話の内容も面白いし、バチスタシリーズでずっと書かれているレティノに関しても、14歳が理解できる範囲で書かれています。(実際には主人公の薫は理解できていないけれど・・・笑)
医学雑誌で連載されていたもので、中高生向けに書かれているのに専門家から面白いと言われるほどの内容。
大人も子供も楽しめます。

医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!)
医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!)
  • 発売元: 理論社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2008/01/17
  • 売上ランキング: 2115
  • おすすめ度 4.0

★9/10
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2008年05月02日

「あんちゃん、おやすみ」佐伯一麦

単行本で発刊された「少年詩篇」を改題。
少年の日のさまざまな光と影を描く47の小品。

ようやく歩けるようになったばかりの「かれ」から、ラジオを組み立てるのに夢中になる「少年」までの、生活の中のふとした一こまが書かれています。
主人公の像は、父親、自分、子供と繋がっている。
「昭和」の少年時代は、こんな風だった。
あたたかい気持ちにさせてくれます。
解説は谷川俊太郎。

あんちゃん、おやすみ (新潮文庫 さ 28-4)
あんちゃん、おやすみ (新潮文庫 さ 28-4)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 380
  • 発売日: 2007/11
  • 売上ランキング: 141630
  • おすすめ度 4.0

★7/10
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2008年04月28日

「聖の青春」大崎善生

第13回新潮学芸賞受賞。

「将棋の子」の前作ですが、私はこっちを後に読みました。
途中に出てくる一つの出来事が、どちらの本にも出てきます。
でも、将棋をしたことが無い私のとっかかりやすさを考えると、こちらを後に読んで正解かも。
重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖(さとし)。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。

良かったです。
とにかくそのひと言。
難病にも負けず、将棋一筋で名人を目指し、自分の出来る事をやりぬく村山聖という人物を知ることが出来て良かった。
とても感動しました。また読みたいです。出来たら将棋の事を少しかじってから・・・。

天才・怪童など言われていますが、子供の頃から並外れた集中力を持っているけれどそれ以上に物凄い努力をしています。
ネフローゼという難病と戦いながら、最後まで将棋に向かっていました。
途中、将棋の一手などの部分が分からず、これが分かれば更に村山聖がどれほど凄い人なのかが分かるかと思うと、私も将棋が出来ればよかったと残念です。
最後にも棋譜が載っているので、それを理解できると更に面白いと思います。

聖(さとし)の青春 (講談社文庫)
聖(さとし)の青春 (講談社文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 680
  • 発売日: 2002/05
  • 売上ランキング: 14130
  • おすすめ度 5.0

★9/10
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2008年04月27日

「愛妻日記」重松清

R-18指定の重松清。奥様には隠れて読んでほしいのです。夫のゆがんだ情欲を描く、初の性愛小説集。
「匿名で官能小説を」という「小説現代」編集部の注文を承けて、表題作を書いた。最初は一度かぎりの企画物のつもりだったが、ハマった。2作目以降は、志願して短編を書き継いでいった。全6編。いずれも、夫婦の物語。官能小説。妻に対する夫のゆがんだ――でも、だからこそまっとうでありうるはずの情欲を描いた。小説の書き手として、これらの物語を僕は欲していたのだろう。今後も夫婦や家族の物語を書きつづけたいから、性から逃げたくなかった、のかもしれない。 重松清

うーん。なんとも感想の書きにくい本です。
普通の夫婦、もしくは性に対して淡白な夫婦が、夫の心の中に隠れていた歪んだ情欲によっていつもと違うセックスをする。
男の目線で、しかも歪んでいるということで、どうも納得のいかない描写もありました。
やっぱり男性は女性を蔑み、征服したいのでしょうか。

目次
ホワイトルーム / 童心 / 愛妻日記
煙が目にしみる / 饗宴 / ソースの小壜

愛妻日記
愛妻日記
  • 発売元: 講談社
  • 発売日: 2003/12/13
  • 売上ランキング: 287379
  • おすすめ度 3.5

★6/10
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2008年04月12日

「螺鈿迷宮」海堂尊

チーム・バチスタの栄光」、「ナイチンゲールの沈黙」、「ジェネラル・ルージュの凱旋」シリーズ。
私はこの順番で読んで正解だと思っていますが、「ジェネラル〜」の前作にあたる第3作目だったようです。
この話はいつもの東城大学医学部付属病院や田口先生は脇役で、敵対する碧翠院桜宮病院の話。
そして「ジェネラル〜」でチラリと出てきた姫宮やいつもの白鳥が主に出てきます。

東城大学に医学生として通う天馬が碧翠院桜宮病院に潜入しスパイをすることになったところから、天馬の悲劇が始まる。
天馬大吉という物凄くラッキーな名前に反して、アンラッキーなことばかり起こるが、はたして本当にアンラッキーなのか、というのが面白い。
姫宮のキャラが素敵すぎ。こういうの、大好きです。
作者が医師なので、現在の医療問題について、世の中に提示しています。
一番伝わってくるのがエー・アイ(オートプシー・イメージングの頭文字、Aiのこと。訳語は死亡時画像病理診断、または画像解剖)について。
お役所はこのシリーズを読んだほうが良いと思う。
そしてこの重要性を、改革する手間と費用との天秤にかけて協議して欲しいと思う。

螺鈿迷宮
螺鈿迷宮
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2006/11/30
  • 売上ランキング: 10279
  • おすすめ度 3.5

★9/10
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2008年04月06日

「神様がくれた指」佐藤多佳子

スリで生計を立てているマッキーこと辻牧夫と、タロット占い師のマルチェラこと昼間薫。

スリの話というところで、あまり良い感じがしないのですが、話の内容は面白かったです。
指を商売道具としているところは、楽器演奏者と同じなんだなと、全うな人間としての道徳心からかけ離れた事を考えながら読んでしまいました。

一匹狼として動くプロのスリであるマッキーは、刑務所から出たその日に、あろう事かスリにあってしまう。
犯人を捕まえるのが最大の目的となったマッキーは、占い師のマルチェラと出会い、マルチェラの家に居候することになる。
お互い居心地の良い同居相手となるのだが、そこに珍客が・・・。

登場人物のキャラは掴みやすくて、好感も持てます。
ただ、話を読み進めると、主人公の気持ちを応援したくなるのが普通ですが、どうも「プロのスリ」という状況を考えると、自分の心の中で葛藤してしまい、★は7/10。

神様がくれた指 (新潮文庫)
神様がくれた指 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 860
  • 発売日: 2004/08
  • 売上ランキング: 25865
  • おすすめ度 4.0

★7/10
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2008年03月31日

「裏庭」梨木香歩

第1回児童文学ファンタジー大賞受賞。

おじいちゃんが話してくれた、近所のバーンズ屋敷に伝わる裏庭とは…。弟をなくした少女の魂の孤独な冒険。ナイーブながらも弾力ある心の在り様を描く、重層的ファンタジー。

話は現実世界のバーンズ家にまつわる人と照美の話と、テルミィの冒険の話に分かれています。
テルミィが冒険をしながら、どんどん成長していき、強くなっていく姿が良いです。
生きるとは。信じるとは。善と悪とは。
人生における重要なことをテルミィは学んでいき、大きな事をなしえます。
登場人物が現実世界と冒険の世界でリンクしていて、それぞれがとても重要な役割をしているのが印象的。
ファンタジーなので、今の超現実的な頭と精神をしている私には、世界に入り込むのに苦労しましたが、気分が乗っていればもっと楽しめたのかも。
それでも★は8/10。

裏庭 (新潮文庫)
裏庭 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 2000/12
  • 売上ランキング: 3700
  • おすすめ度 4.0

★8/10
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2008年03月30日

「モルヒネ」安達千夏

本屋で結構売り出していたので気になっていました。
やっと読んだのに、イマイチ乗り切れなかったです・・・。

在宅医療の医師・藤原真紀の前に、元恋人の倉橋克秀が七年ぶりに現われた。ピアニストとして海外留学するため姿を消した彼がなぜ?真紀には婚約者がいたが、かつて心の傷を唯ひとり共有できた克秀の出現に、心を惑わせる。やがて、克秀は余命三ヶ月の末期癌であることが発覚。悪化する病状に、真紀は彼の部屋を訪れた…。

「ピアニスト」というのに惹かれたというのも事実です。
やっぱり音楽関係の職業の話だと気になるので。
でもなぁ。話の設定が設定だからしょうがないけれど、先が想像ができてしまう。
運命といえるほどの人がふと現れて、余命少しで、ほっておけなくて・・・。
感動まで至りませんでした。

モルヒネ (祥伝社文庫)
モルヒネ (祥伝社文庫)
  • 発売元: 祥伝社
  • 価格: ¥ 570
  • 発売日: 2006/07
  • 売上ランキング: 112212
  • おすすめ度 2.5

★5/10
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2008年03月19日

「将棋の子」大崎善生

第23回講談社ノンフィクション賞受賞。

私は将棋をやったことがありません。それでも問題なく読めました。
将棋が好きな方には、この感動が更に強いものとなるでしょう。
ノンフィクションでここまでのめり込んで読んだのは久しぶりです。

奨励会……。そこは将棋の天才少年たちがプロ棋士を目指して、しのぎを削る”トラの穴”だ。しかし大多数はわずか一手の差で、青春のすべてをかけた夢が叶わず退会していく。途方もない挫折の先に待ちかまえている厳しく非情な生活を、優しく温かく見守る感動の1冊。

成田英二との出会いから再会までを書く中で、奨励会を退会していく数人の棋士が書かれています。
「今までの人生で将棋しかしてこなかった」という状況は、私の「音楽しかしてこなかった」というのと非常に似ていると思います。
それ以外では、スキルも経験も無い、ただの人。他ではつぶしが利かないという状況で、どうしても辞めなければならなかったり、辞めさせられたり。その後どんな困難が待ち受けているのか、想像を絶する世の中が待っている。
でも、どんなに辛くても、悲しくても、寂しくても、自分の中には自分が必死に追いかけていたモノがあるならば、乗り越えられるのではないだろうか。

将棋の子 (講談社文庫)
将棋の子 (講談社文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 2003/05
  • 売上ランキング: 99228
  • おすすめ度 4.5

★9/10
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2008年03月14日

「トワイライト」重松清

小学生の卒業記念に学校の校庭に埋めたタイムカプセルを開封することになった。
26年ぶりに母校で再会した同級生は、昔の胸いっぱいの希望や夢を懐かしむ。

タイムカプセルは一度やってみたかったのに、埋める機会はありませんでした。
楽しそうだなと漠然と思っていただけなのですが。
20世紀の子供の私が想像する21世紀って、やっぱり空中にチューブが張り巡らされて、その中を車が走っているようなイメージでした。
そんな風になるのは、まだ先の話なのですかね。
39歳になった同級生が集まり、昔のイメージや希望や夢を目の前にして、現実の厳しさをかみ締めてしまうのは、実際にタイムカプセルを埋めて開封した人なら私とは少し違う感想を持つかもしれません。
ただ、いつもの通り、重松さんの作品なので、胸が締め付けられます。
現実に引き戻される瞬間は、なんだか悲しくむなしい。
それでも精一杯生きていくしかないのだ。

トワイライト (文春文庫)
トワイライト (文春文庫)
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 660
  • 発売日: 2005/12
  • 売上ランキング: 133723
  • おすすめ度 4.0

★7/10
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2008年03月08日

「床下仙人」原宏一

注目の異才が現代ニッポンを風刺とユーモアを交えて看破する、“とんでも新奇想”小説

初版後、絶版間近だったというこの本。
本屋のPOPで人気沸騰したという。
面白いのに、なかなか世間に知れ渡らない本もあるのですね。

くだらないと言ってしまえばそれまでだけど、結構奥深いところもありました。
それぞれの話に社会風刺がおりこまれ、家族の大切さを再確認させられます。
仕事に夢中で家庭の本当の意味を忘れそうな人、自分が会社のために身を削っていると思う人、何を目的にすればよいか分からなくなった人、それぞれ生き方を見つけていける。
そんなバカな!という出来事をつっこみつつ、読み終わりの気分は良いです。

目次
床下仙人 / てんぷら社員 / 戦争管理組合
派遣社長 / シューシャイン・ギャング

床下仙人
床下仙人
  • 発売元: 祥伝社
  • 発売日: 1999/09
  • 売上ランキング: 510725
  • おすすめ度 5.0

★8/10
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2008年03月05日

「エコノミカル・パレス」角田光代

生き迷う世代を描いて“今”のリアルを映す角田光代の最高傑作。

うーん。最高傑作なのかなぁ。
今時の、どこか投げやりで、軽い気持ちでいる若者の気持ち。
34歳でフリーター。同居の恋人は失業中。海外に放浪のたびに出かけたこともあったけれど、帰国してからはお金も無くなり借金もするし、恋人は仕事しないし、友達は押しかけるし。
身近にありそうな設定の話だけれど、読んでいてむなしくなってしまいました。
もう少し、真剣に生きたほうが良いのじゃないのかな?って。
これが今時の生き方なのかな。
そんなことは無いはずだけど。

エコノミカル・パレス
エコノミカル・パレス
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2002/10
  • 売上ランキング: 506573
  • おすすめ度 2.0

★5/10
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2008年02月26日

「バッテリー」あさのあつこ

全6巻。
「バッテリー」で野間児童文芸賞、「バッテリーU」で日本児童文学者協会賞、「バッテリーT〜Y」で小学館児童出版文化賞を受賞。
映画化もされています。
バッテリー

お恥ずかしいのですが正直なところ、この本を読むまで「あさのあつこ」さんは、女優の浅野温子なんじゃないか?とか、「バッテリー」は電池のバッテリーなのか?と思っていました(笑)
あさのあつこさんは別人だし、バッテリーは野球のピッチャーとキャッチャーの事だから、え?何事?と思いながら読み始めました・・・。

中学入学前に引っ越した巧は、類稀なる才能を持った生まれながらのピッチャー。
そこでキャッチャーの豪と出会う。
バッテリーという野球の中の特別な間柄、お互いに相手を見つめあう。

思春期で自分の思いを素直に伝えられないもどかしさを乗り越えて、伝えなければならないことを一生懸命に相手に伝えるところが印象深い。
こんなにも純粋に野球に没頭し、相手を信じることの難しさや仲間の大切さが気持ちよく書かれていて、「児童書」とは勿体無い枠組みだと思う。
巧の孤独感には胸が締め付けられる思いですが、豪の優しさ、巧の弟、清波の純粋さで救われました。
1巻を読み始めたら最後、6巻まで一気に読み終わりました。
最終巻については★8/10。
この終わり方がベストだろうけれど、読みながら残りのページ数を想像すると妙に悲しくなりました。

話題の本は新刊から読みたいところですが、文庫まで我慢をすると文庫だけの書き下ろし短編が付いているので嬉しいところです。
「バッテリーV」で、青波の視点から描かれた書き下ろし短編「樹下の少年」、「バッテリーW」で、三歳の巧を描いた書き下ろし短編「空を仰いで」、「バッテリーX」で、横手の幼なじみバッテリーを描いた、書き下ろし短編「THE OTHER BATTERY」を収録。

バッテリー (角川文庫) バッテリー〈2〉 (角川文庫) バッテリー 3 (角川文庫)
バッテリー〈4〉 (角川文庫) バッテリー〈5〉 (角川文庫) バッテリー 6 (6) (角川文庫 あ 42-6)
★9/10(最終巻は8/10)
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2008年02月19日

「ジェネラル・ルージュの凱旋」海堂尊

チーム・バチスタの栄光」、「ナイチンゲールの沈黙」に続く第三弾。
桜宮市にある東城大学医学部付属病院に、伝説の歌姫が大量吐血で緊急入院した頃、不定愁訴外来の万年講師・田口公平の元には、一枚の怪文書が届いていた。それは救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという、匿名の内部告発文書だった。病院長・高階から依頼を受けた田口は事実の調査に乗り出すが、倫理問題審査会(エシックス・コミティ)委員長・沼田による嫌味な介入や、ドジな新人看護師・姫宮と厚生労働省の“火喰い鳥”白鳥の登場で、さらに複雑な事態に突入していく。将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名をとる速水の悲願、桜宮市へのドクター・ヘリ導入を目前にして速水は病院を追われてしまうのか…。そして、さらなる大惨事が桜宮市と病院を直撃する。

田口&白鳥コンビも勿論出てきますが、救命救急センターの速水が主人公。
第二弾の「ナイチンゲールの沈黙」と同時期の話なので、歌手冴子が入院する場面や小児科で問題が起きてバタバタしている場面なども出てきます。
エシックスの沼田のひねくれ曲がった性格の悪さには読んでいてムカムカしますが、速水が鮮やかに打ちのめすシーンが最高です。
今回、ドジな新人の姫宮が濃いキャラとして出てきますが、次の「螺鈿迷宮」への繋ぎがチラリと窺えて、ますます楽しみ。

ジェネラル・ルージュの凱旋
ジェネラル・ルージュの凱旋
  • 発売元: 宝島社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2007/04/07
  • 売上ランキング: 326
  • おすすめ度 4.0

★9/10
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2008年02月12日

「恋愛写真 - もうひとつの物語」市川拓司

堤幸彦監督作品の映画『恋愛写真』へのオマージュとして書き下ろされた。
カメラマン志望の誠人は、個性的な静流と知り合い、好意を持たれる。
しかし、誠人は好きな人が居るので、気持ちを受け止められない。
しかし静流は、恋をすると死んでしまう運命にあった。

まだ映画を観ていないのですが、この本を読んで映画が物凄く見たくなった!とまでは思えませんでした・・・。
こういうベタベタな恋愛モノは、読む時の気分で感想が左右されますね。
今はそんな気分ではなかったのかもしれません。

それでも一気に読めるほど読みやすい本でした。
静流の想いが切なく、誠人の想いも切ない。
キスの写真のシーンには泣かされました。

恋愛写真―もうひとつの物語
恋愛写真―もうひとつの物語
  • 発売元: 小学館
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2003/06
  • 売上ランキング: 26168
  • おすすめ度 4.5

★7/10
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2008年01月30日

「ニッポンの単身赴任」重松清

北海道から上海、南極まで、単身赴任の仲間20人をルポルタージュ。

仮名が数名居るものの、リアルな単身赴任生活が分かります。
予想していたよりもマジメなお父さんたち。
家族がばらばらになるというマイナスイメージしかありませんでしたが、以外や以外、家族を結束・団結させるチカラもあるようです。
それぞれの勤務内容、家族構成、赴任先での待遇や仕事仲間の話がそれぞれの状況を作っている。

私の父も5年間単身赴任をしていました。
私はまだ結婚もしていないし、今の生活には関係の無い話ではありますが、さすがシゲマツ。
どの話もほんのり温かく、じーんとさせられました。
出て行く側、見送る側、帰る側、待つ側。
家族って良いですね。ほんとに。

ニッポンの単身赴任 (講談社文庫)
ニッポンの単身赴任 (講談社文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 600
  • 発売日: 2005/10
  • 売上ランキング: 76100
  • おすすめ度 4.0

★8/10
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2008年01月25日

「メリーゴーランド」荻原浩

9年前に過労死続出の職場を辞め、Uターンした啓一は田園都市の市役所勤務。
平穏無事の人生だったはずが、第3セクター経営の超赤字テーマパークの再建プロジェクトに異動することに。

いつものように、ありえそうでありえない話で痛快です。
主人公の遠野啓一は、優柔不断でどこにでも居そうなサラリーマン。
転機をきっかけに思い切った行動をするところは、実際自分がそのような行動を出来ないからか、スッキリします。
馬鹿馬鹿しい考え方のお役所人間を、メッタ切りするところなんか最高。
メリーゴーランドの場面も良い。
ほろりとさせられます。

メリーゴーランド (新潮文庫)
メリーゴーランド (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 2006/11
  • 売上ランキング: 52579
  • おすすめ度 4.5

★8/10
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2008年01月17日

「夜かかる虹」角田光代

文庫化するにあたり「草の巣」を改題。

ひとり暮らしの私を突然男連れで訪ね、男を置いて帰ってしまった妹リカコ。外見はそっくりで性格は正反対。人とのつながり、自分の居場所を誠実に問う。

表題作ともうひとつ「草の巣」を収録。
角田光代の特徴が良く出ている、悪く言うといつも通りの話という感じ。
なんだか変なのに、そのまま日常が進んでいく感じ。
私は「草の巣」の方が良かったかな。
バイト先の常連の無口な男に、日常を捨てて付いて行く話。
こんなの普通ありえない、こんな風にするはずがない、と思いつつ、いつもの私から遠ざかりたいという気持ちが心の何処かに隠れているならば、そのことに気が付いたら、そうしようと思うなら、簡単にそうできるのだと思わせられる。

夜かかる虹 (講談社文庫)
夜かかる虹 (講談社文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 520
  • 発売日: 2004/11
  • 売上ランキング: 298346
  • おすすめ度 3.0

★6/10
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2008年01月03日

「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎

第25回吉川英治文学新人賞受賞。
映画化もされています。
映画「アヒルと鴨のコインロッカー」公式ページ

引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!

いつものように時間の流れが変わったとき、いつものようにそうだったのかと思わされる。
ただ、今回は「そうきたか、それはあり?」という感があって★は7/10。
動物虐待の話で暗い内容もあるのに、読み終わりは思った以上にさわやか。
キャラクターの個性が濃くて、魅力的です。
ブータンの、蚊ですら殺さない意識には、話の内容とは別にはっとさせられました。
「ソウデスネ」これは私も使いたい(笑)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 680
  • 発売日: 2006/12/21
  • 売上ランキング: 600
  • おすすめ度 4.0

★7/10
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