2007年06月28日

「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ

ずっと気になっていた作家で、やっと初めて読みました。

自殺をしようと覚悟を決めた千鶴は、山奥の民宿に辿り着く。
睡眠薬を飲んでみたが、失敗に終わってしまう。
大雑把だけれども優しい民宿の田村さん、農家のおばあさん、パン屋のおばさん。
朝早くに起きて散歩を続ける千鶴は、大自然の中で、やるべき事をきちんとやるという健康的な精神に癒される。

凄く読みやすく、すぐに読み終えてしまったけれど、すぐに読み返したくなる本。
自殺まで考えなくても良いのにと思いつつ、共感できる部分もある。
圧倒的な大自然のなかで、千鶴が徐々に健康的になっていく部分や、田村さんのきちんと生きている充実感などが印象的。
疲れた心を癒してくれる一冊でした。

天国はまだ遠く
天国はまだ遠く
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 380
  • 発売日: 2006/10
  • 売上ランキング: 33252
  • おすすめ度 4.0

★8/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:01 | 東京 🌁 | Comment(2) | TrackBack(1) | 本を読んで| edit

2007年06月25日

「薬指の標本」小川洋子

映画化もされています。
映画『薬指の標本』 公式サイト
小川洋子の作品は海外に翻訳も沢山されていますが、なんとこの映画はフランス映画。

人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働く私は、標本技術士に靴をプレゼントされる。
毎日履くように言われるが、あまりにもピッタリとなじみ、脱げなくなってしまう。

小川洋子の小説には、読んでいるうちに愛おしく思える小物が沢山出てきます。
そして、そのどれもが話の中で愛情たっぷりと使い込まれます。
楽譜やきのこや文鳥の骨など、標本室には様々なものが持ち込まれます。
忘れたくないものや、忘れたいけれど忘れられないものを、封じ込めるための標本室。
主人公の私は前の職場で薬指を少し切ってしまうのだが、その描写が痛々しくもあるがスローモーションで観ているように綺麗。
映画化でのこの部分が、気になります。

実際には無いだろうけれど、こんな世界があったら…、というもう一つの物語「六角形の小部屋」も収録。
誰も居ない部屋に入り、自分の話したいことを話すというもの。
こちらも特殊だし奇異で、普通の世界ではありえないけれど、読んでいてなんだか納得してしまう世界。
こんな部屋があったら私は何を話すのだろう。

薬指の標本 (新潮文庫)
薬指の標本 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 380
  • 発売日: 1997/12
  • 売上ランキング: 97511
  • おすすめ度 4.5

★8/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:50 | 東京 🌁 | Comment(4) | TrackBack(4) | 本を読んで| edit

2007年06月22日

「かっぽん屋」重松清

デビュー間もない時期に書き下ろされた短編集。
思春期の少年の性への関心がリアルに書かれている。
作品の色合いで、レコードのようにA面とB面に分かれている。

「かっぽん」という言葉ははじめて知りましたが、西のほうでは使われているのかしら。
もしそうなら、この本の題名は電車の中で読むには結構恥ずかしいですね。
重松清の初期の作品は、私が今まで読んだものとは少し感じが違いました。
心がほんわかする話も健在でしたが、笑える話やスカッとするような話もありました。
「大里さんの本音」が読んでいて気持ちが良かったです。
私も潜在意識を出してみたい…。
付録としてロングインタビューを2本収録。
重松清が重松清になる前の事や、他の作品のことなどにも触れているので興味深かったです。

目次
すいか / ウサギの日々 / 五月の聖バレンタイン / かっぽん屋
失われた文字を求めて / 大里さんの本音 / 桜桃忌の恋人’92
デンチュウさんの傘 / 「それでも人は生きる」場所で
いつだってテーマは人とのつながり

かっぽん屋
かっぽん屋
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 600
  • 発売日: 2002/06
  • 売上ランキング: 18671
  • おすすめ度 3.5

★7/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:50 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | 本を読んで| edit

2007年06月08日

「逃亡作法 TURD ON THE RUN」東山彰良

第1回『このミステリーがすごい!』大賞と読者賞をダブル受賞。

近未来の刑務所内から話が始まる。
受刑者は「アイホッパー」というマイクロチップを首の後ろに埋め込まれ、認識番号で管理される。脱獄すると目玉が飛び出してしまう仕組み。
死刑は廃止され、アメリカのように生きているうちには刑を終了されないような長い刑期が科せられる。
ツバメ、ミユキ、モモ、川原昇、昇に娘を殺されたカイザー、在日韓国人の張と朴。
ツバメは脱獄し、カイザーは昇に復讐をしようとする。

ダブル受賞というのに期待しすぎてしまったのか、あまり楽しめませんでした。
もちろんそれなりには面白いのですが、表現が暴力的で主人公達に魅力が感じられず。
ツバメのクールさ、カイザーの昇への恨み、張の異常さ。
前半は話の展開もスピード感があるのですが、少し落ち着きどころが無いというか、騒がしい感じ。
アイホッパーや刑務所でのシステムなどは面白かったです。

逃亡作法 TURD ON THE RUN 宝島社文庫
逃亡作法 TURD ON THE RUN 宝島社文庫
  • 発売元: 宝島社
  • 価格: ¥ 935
  • 発売日: 2004/03/16
  • 売上ランキング: 35888
  • おすすめ度 3.0

★5/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 01:01 | 東京 ☁ | Comment(6) | TrackBack(2) | 本を読んで| edit

2007年06月05日

「オロロ畑でつかまえて」荻原浩

第10回小説すばる新人賞受賞。

前に読んだ「なかよし小鳩組」の前作。
ユニバーサル広告社の社員一同が登場します。

日本一奥地の秘境、大牛郡牛穴村は人口300人。
超過疎化をストップさせるべく、牛穴村の青年会が村のプロデュースを零細ユニバーサル広告社に依頼する。
村おこしは果たして成功するのか。

「なかよし小鳩組」同様、とんでもないプロデュースをユニバーサル社員一同で大真面目に取り組む姿が笑えます。
とある仕掛けで、現代の日本から遠くかけ離れた小さな村が日本中の注目の的に。
そんなバカな…と思ってしまう事を、みんなが自分勝手にそれぞれの思惑で進めていくのが面白い。
脇坂涼子がステキ。

オロロ畑でつかまえて
オロロ畑でつかまえて
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 480
  • 発売日: 2001/10
  • 売上ランキング: 14068
  • おすすめ度 4.0

★6/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:11 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年06月02日

「風が強く吹いている」三浦しをん

2007年本屋大賞3位。

蔵原走の走りを一目見て、激安学生寮の竹青荘に10人の住人が集まったときに清瀬灰二は決意する。
箱根駅伝に出場する!と。
その時点で専門的に身体を鍛えているのは走とハイジだけ。
他の8人は陸上からもかけ離れ、長距離は経験なし。
たった10人で箱根駅伝に挑む。

毎年恒例の箱根駅伝をテレビで時々見ているだけに、情景も浮かびやすい。
もちろん三浦しをんの取材も緻密で、書き方も素晴らしい。
たった10人で、しかも素人ばかりで箱根駅伝に挑むなんて、明らかに無謀すぎる試み。
読みながら「現実にはそんなに上手くいくはずがない」なんて思いながら、気がついたら10人を必死に応援していました。
王子、ムサ、ジョージ、ジョータ、神童。
ユキ、ニコチャン、キング、走、清瀬。
一人一人が走りながら色んなものに思いを馳せ、自分と戦い、限界に挑戦している姿はとても綺麗。
まるで自分が10人の素晴らしい仲間と一緒に箱根駅伝を体験したかの爽快感。
何度も泣かされましたが、読み終わりはスッキリ。
走るのって良いですね。

風が強く吹いている
風が強く吹いている
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2006/09/21
  • 売上ランキング: 3142
  • おすすめ度 4.5

★10/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 01:27 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年05月30日

「これからはあるくのだ」角田光代

角田光代のエッセイは私を元気にしてくれます。
どんな考え方をすればこんな発想になるのだろうかと不思議に思うことから、「そうそう分かる」と頷いてしまうものまで。
些細な日常のことや失敗談など、角田光代の生活と性格が見え隠れして面白いです。

「これからはあるくのだ」を本屋で見たときは、てっきり「前を見て歩こう!」というポジティブな考え方だと単純に思っていましたが、読んでみてビックリ。
そうではなくて、歩くという行為そのものでした。
それでもこの本に収録されているエッセイを全て読み終えたときに、なぜか「これからはあるくのだ」という気持ちにさせられるのが不思議なところです。
解説は大好きな三浦しをん。

これからはあるくのだ (文春文庫)
これからはあるくのだ (文春文庫)
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 530
  • 発売日: 2003/09
  • 売上ランキング: 40218
  • おすすめ度 5.0

★8/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 01:08 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年05月26日

「アジアンタムブルー」大崎善生

愛する人が死を前にしたとき、あなたは何ができますか?

パイロットフィッシュ」の続編。
映画化もされています。
『アジアンタムブルー』公式サイト

主人公である山崎は、妻の葉子を癌で失う。
デパートの屋上に通う毎日の中で、自分の過去に思いをめぐらせる。
万引き、綺麗な先輩、永遠の定義。
月刊『エレクト』の編集仕事で知り合うSMの女王ユーカや、デパートの屋上で知り合う、同じく愛する人を失った宏美との会話の中で自分を掴む。

「パイロットフィッシュ」ではそんなに思わなかった「村上春樹風」をこの作品では結構感じてしまいました。
意識しているからかもしれないけれど、会話の仕方や小物のチョイスや全体的な雰囲気に、どうしても村上春樹が見え隠れしてしまいました。
それでも作品自体は良かったです。
愛する人を失うことが分かったとき、何が出来るのか。
失ってしまった後の悲しみの中から、それでも生きなければならないという前を見る姿勢。
切なく、胸が締め付けられました。
憂鬱の中からしかつかめないものがある

アジアンタムブルー
アジアンタムブルー
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 580
  • 発売日: 2005/06/25
  • 売上ランキング: 65702
  • おすすめ度 4.5

★9/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 21:55 | 東京 ☀ | Comment(2) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年05月23日

「号泣する準備はできていた」江國香織

第130回直木賞受賞。
12編の短編集。

歳を重ね、それぞれの生活の中に忍び寄る不安やすれ違いを描いている。

今の気分にあまり合っていなかったのか、どれもイマイチ心に響きませんでした。
表題作で直木賞を受賞した「号泣する準備はできていた」よりも「溝」と「そこなう」の方が良かったです。
もの悲しく、切なく、だからどうするっていう訳でもないまま終わってしまう。
きっと余韻を楽しむのでしょうが、余韻がジワジワと味わえるまで心に染み込んで来ませんでした。
しばらくしてから、再読かな。

目次
前進、もしくは前進のように思われるもの / じゃこじゃこのビスケット
熱帯夜 / 煙草配りガール / 溝 / こまつま / 洋一も来られればよかったのにね
住宅地 / どこでもない場所 / 手 / 号泣する準備はできていた / そこなう

号泣する準備はできていた
号泣する準備はできていた
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2003/11/19
  • 売上ランキング: 207367
  • おすすめ度 3.0

★6/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:50 | 東京 🌁 | Comment(2) | TrackBack(1) | 本を読んで| edit

2007年05月20日

「コンセント」田口ランディ

ネットコラムニストの小説デビュー作。
映画化もされています。

金融雑誌の編集ライターのユキの兄が死んだ。
死因は衰弱死で、部屋にはこれから掃除をしようと言わんばかりに、掃除機にコンセントが繋がっている。
兄が亡くなってから、度々ユキの前に兄が現れ、兄の部屋に残っていた死臭を忘れられなくなる。
街中でも恋人からもその死臭が気になり、学生時代の教授で心理学の国貞にカウンセリングを求める。

兄の死体があった現場の描写が生々しい。
本文の中にも話がオカルトだとあるが、描写もオカルト。
ただ、あまり怖いのが得意でない私でも、抵抗なく読めました。
ユキが正常と異常、健康体と病の境界線に近づきそうになる部分が読ませます。
読み進めると「コンセント」の意味がだんだん分かってくるのですが、気がつくとあっという間に読み終わっていました。
グロテスクだし、不健全だけれども。

コンセント
コンセント
  • 発売元: 幻冬舎
  • 価格: ¥ 630
  • 発売日: 2001/12
  • 売上ランキング: 113198
  • おすすめ度 4.0

★7/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 01:17 | 東京 ☀ | Comment(3) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年05月17日

「GO」金城一紀

第123回直木賞受賞。
窪塚洋介、柴咲コウ、大竹しのぶ、山崎努等の出演で映画化もされています。

日本で生まれ育った僕(杉原)は「在日」と呼ばれる。
オヤジはハワイに行きたいと言い出し、国籍を「朝鮮籍」から「韓国籍」に変える。
恋をしたけれど、相手の女の子は「日本人」だった。

文中で杉原は「これは僕の恋愛に関する物語だ」と言っているけれども、恋愛小説ではない、というか恋愛小説だけではない。
日本で生まれて日本で育っているのに、どうしてもつきまとう「在日」という差別。
冒頭部分で胸が締め付けられました。
「在日」なだけで日常生活で数え切れない程の嫌な思いをし、国からも日本人とは明らかに違う扱いを受ける。
たった一つのことなのに、こんなにも縛られる国籍とは一体なんでしょう。
強く生きなければ潰されてしまうと、無意識でも意識的でもガードを硬くしていく姿が、そうさせてしまっている日本人として辛いです。
とにかく色々考えさせられました。読んで良かった。
映画も観なければ。
俺は何者だ? (中略) 俺は俺なんだ。

GO
GO
  • 発売元: 講談社
  • 発売日: 2003/03
  • 売上ランキング: 58410
  • おすすめ度 4.5

★10/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:50 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(2) | 本を読んで| edit

2007年05月16日

「白いへび眠る島」三浦しをん

単行本では「白蛇島」という題が付いている。
それに加筆、改題した。

「拝島」(おがみじま)という架空の島が舞台。
白蛇を神と崇め、外部者を寄せ付けない島。
十三年ぶりの大祭でにぎわう島に、高校生の悟史は夏休みに帰省する。
悟史は「持念兄弟」とよばれる幼なじみの光市と『あれ』と呼ばれる怪物に迫る。
本当の「自由」の意味とは。

東京に「拝島」(はいじま)という場所があるので、冒頭部分で「え!?」と読み返してしまいました。
三浦しをんのエッセイは爆笑モノなのに、小説になると雰囲気が全然違います。
高校生の大冒険ファンタジーという感じでしたが、知らないうちに話に夢中になっていました。
登場人物の描写も、奇妙な「拝島」の描写も、手に取るような分かりやすさ。
読み終わると「拝島」には何度も行ったことがあるような気さえしてきます。

白いへび眠る島
白いへび眠る島
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 660
  • 発売日: 2005/05/25
  • 売上ランキング: 75756
  • おすすめ度 4.0

★7/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 01:28 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | 本を読んで| edit

2007年05月14日

「ホテル・アイリス」小川洋子

染みだらけの彼の背中を、私はなめる。腹の皺の間に、汗で湿った脇に、足の裏に、舌を這わせる。私の仕える肉体は醜ければ醜いほどいい。乱暴に操られるただの肉の塊となった時、ようやくその奥から純粋な快感がしみ出してくる…。少女と老人が共有したのは滑稽で淫靡な暗闇の密室そのものだった―芥川賞作家が描く究極のエロティシズム。

ホテル・アイリスで働く17歳のマリと、変人と噂されるロシア語翻訳家の老人の恋の話。
上の引用部分だけで強烈な印象。

「博士の愛した数式」から読み始め、既に何冊か小川洋子の本を読みましたが、こんなにもエロティックなものは初めてでした。
そして「博士の愛した数式」は、なんて読みやすい本だったのかと再確認。
読みやすいというか、小川洋子の入門本という感じ。
初老の男のくすんだ皮膚・貧弱な肉付き・たるんだ脂肪や、マリに施された傷・縛った痕などが、生々しい。
静かで緩やかな時間の流れで少女と老人が愛し合う、とても濃い空間。
一般的に綺麗とは言えない様なことを、綺麗と思わせる描写で書かれているのはさすが小川洋子。

ホテル・アイリス
ホテル・アイリス
  • 発売元: 幻冬舎
  • 価格: ¥ 520
  • 発売日: 1998/08
  • 売上ランキング: 129781
  • おすすめ度 4.5

★7/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:50 | 東京 🌁 | Comment(2) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年05月10日

「愛してるなんていうわけないだろ」角田光代

角田光代の初エッセイ集。
これを書いた22歳の角田光代に対して、10年後である32歳の角田光代が書いた「マイニチ」というエッセイも収録。

最近のエッセイと比べてしまうと、やはり「若い」という感じがします。
それでも根本的にはもちろん変わってないわけで、角田光代の恋愛感など興味深いです。
恋人の元へタクシーをぶっ飛ばしたかったり、ラッシュが大嫌いだったり、誰もが思ったことがある様な事を面白く書いてあります。
どんなところも含めて全部で「私」であることを、もっと正々堂々と胸を張って主張し、人生は楽しまなくちゃ、という意識が素敵。

愛してるなんていうわけないだろ
愛してるなんていうわけないだろ
  • 発売元: 中央公論新社
  • 価格: ¥ 580
  • 発売日: 2000/03
  • 売上ランキング: 77323
  • おすすめ度 5.0

★6/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:55 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年05月07日

「最後の恋」

「最後の恋」というテーマで8人の女性作家が書いた、それぞれの短編。
三浦しをん、谷村志穂、阿川佐和子、沢村凛、柴田よしき、松尾由美、乃南アサ、角田光代のアンソロジー。

それぞれテーマに沿って「これもひとつの最後の恋」という作品ばかりでしたが、特に気に入ったのは三浦しをんの「春太の毎日」。
主人公の春太が可愛いし、相手の麻子も魅力的。
そしてまんまとやられました。
他の作品もそれぞれ良く、ミステリー的な要素があるものもあります。
ただ短編なので話は浅く終わってしまい、一つ読み終えて次の作家に移るのに少し体力が要る気がしました。
ただ単に私がアンソロジーを読み慣れていないだけかもしれませんが。

最後の恋
最後の恋
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2005/12/20
  • 売上ランキング: 242692
  • おすすめ度 4.0

★7/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:50 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年05月04日

「オーデュボンの祈り」伊坂幸太郎

第五回新潮ミステリー倶楽部賞受賞。

コンビニ強盗をした伊藤は、知らないうちに150年もの間外部との交流を持たない孤島「荻島」にいる。
そこには言葉を話し未来を予知するというカカシ「優午」、嘘しか言わない画家、ルールとされる殺人をする「桜」などがいる。
神様のように扱われ、未来を予知できるけれど未来の事は人に話さない優午は、伊藤に未来を話す。
次の日、優午が殺される。
「この島には欠けているものがある」という伝説と、優午の考えていたこととは。

あっという間にこの世界に引きずり込まれました。
変わった場所に変わった人々。
独特の世界観のファンタジーに、人にとって大事なことが織り込まれているような感じ。
人間とは思えない冷酷な城山は正真正銘の警察官で、たまたま幼馴なじみの伊藤を追うのだが、読んでいる間は荻島のゆったりとした時間に意識が麻痺していたのもあって、リアリティの欠けた荻島と対照的な現実感たっぷりの悪人の城山がとても怖いです。
全ては必要な事で、意味のある事なんだ、という存在価値のつながりが面白かったです。

オーデュボンの祈り
オーデュボンの祈り
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 660
  • 発売日: 2003/11
  • 売上ランキング: 3336
  • おすすめ度 4.5

★9/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:40 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | 本を読んで| edit

2007年05月02日

「夜の果てまで」盛田隆二

単行本「湾岸ラプソディ」を改題、文庫化。

大学生の俊介は付き合っていた女の子に別れを告げられ、ふと入ったラーメン屋で、バイトをしているコンビニでいつもM&Mチョコレートひとつだけを万引きしていく女性「裕里子」に出会う。

期待をしすぎていた為か、少し物足りない感じがしてしまいました。
俊介の祐里子への気持ちもイマイチ煮え切らないように感じるし、決断力も無く頼りがいが無い。
大学生の頃はそんなものかもしれないけれど、自分の人生に対しての考え方も甘い。
順風満帆なはずの人生を捨てるだけの覚悟と、それに値する愛情がつり合っていないので、共感も出来ませんでした。
ただ、祐里子の息子「正太」のキャラクターだけはしっかり書かれていて好感を持ちました。

夜の果てまで
夜の果てまで
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 780
  • 発売日: 2004/02
  • 売上ランキング: 59290
  • おすすめ度 4.0

★6/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:50 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年04月28日

「今、何してる?」角田光代

恋愛と旅と本をめぐるエッセイ集。

この本の前に角田さんの本を読んだのが「みどりの月」だったからか、イマイチ期待をしないで読んでいました。
いやいやー。面白かったです。
「ふつう」とは、それぞれ違うんだ。

「恋愛プリズム」では、角田さんの飾らない素の部分が見えてきます。
読み終わると共感や同感でさっぱりすっきり。

「恋の言葉に溺れるな!」では、映画や本の中の言葉やセリフを取り上げています。
その言葉について深く追求したり、突っ込んだり。

「旅と本の日々」では、旅が好きな角田さんが旅と本について書いています。
旅をするときに持っていく本の選び方は重要。
外国だったら尚更で、買い替えは出来ないし、相性もある。
旅での経験だけではなく、日常だけれども自分の管轄外でのことなども。

朝日新聞連載の「本と一緒に歩くのだ」の本のエッセイは、日常の何かに共通する数冊の本を紹介している。
この人はどんな本を読んでいるのだろうかと思っていたけれど、どんな本も読んでいるんだ(笑)
幅広いジャンルで、取り上げられている本の中に私が読んだことのある本があると、嬉しくなりました。
読んでみたいと思う本も何冊もあり、私の「読みたい本リスト」はまた増えてしまいました。

ページ数に比べると、満足感たっぷり。
お腹一杯になれる一冊でした。

今、何してる?
今、何してる?
  • 発売元: 朝日新聞社
  • 価格: ¥ 525
  • 発売日: 2005/03/17
  • 売上ランキング: 43001
  • おすすめ度 4.5

★9/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:59 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | 本を読んで| edit

2007年04月27日

「鴨川ホルモー」万城目学

第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞。

京都の街に巻き起こる、疾風怒涛の狂乱絵巻。都大路に鳴り響く、伝説誕生のファンファーレ。前代未聞の娯楽大作、碁盤の目をした夢芝居。
↑データベースにはこう書いてある。
まぁ、何も間違っていない(笑)

大学生になった安倍は京大青竜会というサークルに入る。
協定、合戦、片思い。
そしてホルモー。

帰国子女の高村、鼻のステキな早良京子、サークル会長のスガ氏など、登場人物のキャラクターも好感が持てる。
式神や鬼などという一般的イメージからはかけ離れた、気軽に楽しめる本でした。
たとえ2冊になっても、もっとホルモー部分を詳しくあったら良かったな。
他大学の様子とか、訓練の様子とか、鬼語とか。
「ホルモー」の意味・内容を書いてしまうとネタバレになってしまうので、読んでからのお楽しみという事で。
レーズンをお供に。
ホルモォォォー!

鴨川ホルモー
鴨川ホルモー
  • 発売元: 産業編集センター
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2006/04
  • 売上ランキング: 3635
  • おすすめ度 4.0

★8/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 01:25 | 東京 ☀ | Comment(1) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

2007年04月22日

「アイルランドの薔薇」石持浅海

本書にてデビュー。

南北アイルランドの統一の秘密交渉を進める装勢力NCF。
そんなNCFの幹部達が宿泊した湖畔のロッジで殺人がある。
NCFが依頼した殺し屋は、まだ手を下していない。
たまたま居合わせた日本人「フジ」を含む宿泊者達の中に犯人はいるのか。

ロッジの中での殺人に日本人で科学者のフジが鋭い推理で大活躍。
あまりに美味しいところ取りで、出来すぎのような感じもするけれど、やはり日本人の活躍というのが嬉しかったりします。
殺し屋と犯人が別人なので、二人を探しながら読み進めます。
この人だろうという予想をキレイに裏切ってくれました。
私の読みは甘かったのかしら。

アイルランドの薔薇
アイルランドの薔薇
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 580
  • 発売日: 2004/09/10
  • 売上ランキング: 25975
  • おすすめ度 4.0

★9/10
▲TOPへ
posted by このみ。 at 23:50 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を読んで| edit

▲TOPへ
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。